”純せっけん”ということばをご存知でしょうか。
せっけんの表示に見かけることばです。なにか特別に純粋なせっけん？純せっけんと普通のせっけんは違いがあるのでしょうか。
純せっけんとはせっけんの種類を示すことばではなく、せっけんに含まれている「せっけん分」のことです。そしてその割合を純せっけん率と呼びます。
せっけんのなかのせっけん分とはおかしな表現ですが、せっけんとはもともと特定の物質を示す化学のことばです。化学分野では脂肪酸（オレイン酸やリノール酸などの天然の物質）にナトリウムやカリウムなどが一定のかたちで結合した脂肪酸アルカリ塩のことをせっけんと呼んでいます。
せっけんは界面活性剤として機能し、油や汚れを落とします。合成洗剤も同様ですが、脂肪酸アルカリ塩とは異なる物質構造です。せっけんも含めて、これらの界面活性剤は一般に洗剤と呼ばれます。
せっけんには脂肪酸アルカリ塩以外の物質も含まれています。水分。製造過程でせっけんにならずに残った油脂成分。洗浄能力を上げるための添加剤、保存料、香料、酸化防止剤などです。複数の物質の混合であるせっけんについて、そのなかの脂肪酸アルカリ塩の割合を示すときに純せっけんとか純せっけん分、純せっけん率と呼びます。
せっけんについて純せっけん分がどれくらいかわかると洗剤としての性質を知ることができて便利です。JIS（日本工業規格）は純せっけん分を特定するための分析手順を定めていて、その分析結果により純石せっけん98.0%などと表現します。せっけんについて純せっけん分を明らかにしておけば洗浄能力の目安となります。この目安は他の工業製品の性能試験にも利用できます。たとえばタオルを何回も洗濯して耐久性を試験するとき、「洗剤はJIS規格で純せっけん率○○%のものを○○%希釈して使用」と記述すれば条件が一定になり客観的評価がしやすくなります。
純せっけん率の試験方法は、まずせっけんから水分を取り除き（蒸発させる）、その残りについて薬品などで処理しながら脂肪酸アルカリ塩の重量を割り出し、その重量比率をもとめます。注意しなければならないのはこの重量比はせっけんに対するものではなく、せっけんから水分を差し引いた重量に対するものだということです。たとえばせっけん100に対して水分10 を差し引いた残りの物質90について、そのなかのせっけん分の占める重量割合になります。したがって純せっけん率99．8％といってもそれはもとのせっけんの99．8％ではなく、そのせっけんから水分を差し引いたあとの99．8％なのです。この例ではもとのせっけん100に対して純せっけん率は重量比89．8％（99．8 x 90/100）となりますが少しわかりにくいですね。純せっけん率を表記するのなら、その分析方法も示してほしいものです。
また、純せっけん＝無添加と言われることもありますが、「純せっけん」はせっけんに含まれるせっけん分を表し、「無添加」はせっけんに特定の添加物が使われているかを表しているので、同列に扱えることばではありません。そもそも「無添加」ということば自体も曖昧なもので、旧指定表示成分さえ使っていなければ、無添加せっけんとして販売しても問題がないのです。香料を使っていないだけの無香料せっけんを無添加せっけんとして販売している場合もあります。
「純せっけん率が高いせっけん=無添加せっけん」と連想されることはありますが、あくまで印象です。実際に無添加せっけんなのかは原材料を見ないことにはわかりません。
せっけんは肌に直接使用するため、手作りであっても大量生産されるものであっても、含有している成分が肌に影響を与えます。商品が魅力的に見えることばに惑わされずしっかりと原材料を確認して選ぶことが重要です。ギフトとしても人気のせっけん。人に贈るなら、感謝の気持ちを込めて、使用されている成分にも気を遣って選べば喜んでいただけるのではないでしょうか。
ニコハンドメイドソープのせっけんは、ひとつひとつ丁寧に手作りしています。７～９つの原料のみでシンプルに仕上げたコンパクトなせっけん、純せっけん分率は93.4%です（ニコハンドメイドソープオリジナルについて：JISK3301、一般財団法人日本食品分析センターによる試験実施結果）。
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